先日掲載したケアマネジャーの話題に続き、今回もケアマネージャーに纏わる法改正について触れていきたいと思います。
というのもこれはケアマネージャーだけの問題でなく、訪問看護、強いては在宅業界全体に関わる大問題であるからです。
2018年に改正された介護保険法で、居宅支援事業所の管理者は”主任ケアマネジャー”であることが義務付けられました。2021年3月までを猶予期間とされましたが、今年11月13日に加藤厚労相は上記管理者要件の厳格化について「再考する」といった意向を示しました。
改定発表当時から在宅業界ではかなり話題になり、それから1年半が経過しましたが、現在事業所の約44%には”主任ケアマネージャー”がおらず、これらの事業所はこのままだと二年半後に廃業を余儀なくされることになります。
この”主任ケアマネージャー”の資格取得は大変困難で 、
①費用:3〜6万かかり
②資格要件:ケアマネージャーとしての職歴5年
③研修時間:70時間
①はともかく、②については発表から猶予期間が3年しかないにも関わらず、職歴5年。
③についても、日頃から忙しく訪問先を飛び回るケアマネージャーには厳しい要件だと感じます。
話はそれだけでは終わらず、一事業所あたり複数のケアマネージャーが在籍していると思われる居宅支援事業所自体が廃業となると、在籍しているケアマネージャーが担当している利用者にとってもケアプランの担当がいなくなってしまい路頭に迷うことになります。
つまり介護難民となってしまう訳です。
もちろん、介護事務所の閉鎖はよくある話で、一般的には近所で付き合いのある事業所に依頼し、利用者に迷惑のかかることの無いように滞りなく引継ぎを行うのが慣例です。
しかし、今回の話は規模が違います。2018年4月の時点で全国約4万の居宅支援事業所が存在しますが、その何割かが一斉に廃業となるとすると現場には大混乱が起きるでしょう。
現実的には
①実際には廃業する事務所に在籍していたケアマネージャーが近隣の要件を満たす居宅介護支援事業所に転籍し、引続き担当する。
または
②厚生労働省が今回の要件を見直す
というところに落ち着くのではないかと思います。①というのはいわゆる「1つの居宅介護支援事業所の大規模化」であり、居宅介護支援事業所だけでなく、訪問看護においても数年前からこの流れを汲んでいます。こうした国の意向は診療報酬や介護報酬の、加算要件を見ると見て取れます。
今後在宅療養を支える上で、
【難病】 【小児】 【終末期 】 【精神 】
がキーワードとなっていますが、それを行うためには、小規模な事業所でなく、大規模な事業所で対応した方が利用者にとっても安心だからでしょうか。
とはいえ、利用者にとって今回の改正で、担当するケアマネージャーやケアマネージャーの会社(居宅介護支援事業所)が変更となれば心穏やかではないでしょう。
今後の動向に注目していきたいです。